カズシン株式会社 代表取締役 山内和美のブログ
不動産業界20年を超えて、この経験に基づく…取引のこと、物件のこと、人間のこと。
宅地建物取引業者(不動産業者)カズシンの代表 山内和美が思うこと。
2021.10.26
レジャーホテルは、収益で判断される物件です。ただし、売りに出る場合は大抵、売上が下がっていますので、利益率がいいかと言えば、そうとも言えないわけです。
一般的な観点から売上、利益が落ち込めば価格も下がるのかと言えば、レジャーホテル物件の場合、そうとも言えないように思われます。
また、通常の不動産は、積算価格(土地の値段と建物の値段)がおおむねベースになりますが、レジャーホテル、いわゆるラブホテルは、土地の値段がほとんどなくても、建物がかなり古くても、数億円する場合があります。収益還元で見られると言えばそれもあるにしても、基本的に、レジャーホテル(ラブホテル)の売価は高いです。もちろん、土地の価値が大きいところは、その分高値で売れやすい傾向はありますが、土地の価値があまり無いところでも価格がその分下がるかと言えば、強い価格で売買されるケースが少なくないのがレジャーホテルの特徴です。
「相場が高い」のがレジャーホテルだと思います。
平成16年初めてレジャーホテル物件を扱うことになり、間もなく18年になります。駆け出しの頃から、少し落ち着きを持てつつある今に至るまで、相場の波は幾度かあったはずですが、常に「相場は高い」と感じます。リーマンショックの影響が大きく出た時期において、たしかに、一転して価格が手頃になった印象はありましたが限定的であり、一時的な例であり、相場は遅れず回復したように感じます。
今回のコロナショックでも、価格は大幅に崩れるということはなく、安売りということが起こりづらい市場であるとあらためて実感するものです。たしかに、高いと物件は動きづらいということはあります。融資環境によって動きが止まり、売買が成立しづらい面があるとしても、とくに都市部においては、損切的な動きは、少なくとも今のところおおむね感じられません。売上減少と売買価格が連動しない印象があります。
一部例外的に手頃になっている物件や、他の不動産と同様地方において物件価格が安くなっているケースはレジャーホテルにおいても見られます。閉店していたり営業がほとんどされていないなど、すでにほとんど売上がないケース、売上の回復が非常に困難なケースは、値段は安くとも買い手が付きづらい状況はあります。
レジャーホテルは一般の物件のように同じような物件がたくさんあるというわけではなく、そもそもレジャーホテルの軒数、そして売り物件が限られていますので、市場において競争が起きづらいのではないかと思います。
レジャーホテルを購入する時に、土地値を気にしていたら買えないような価格で皆さん買っています。レジャーホテルの「儲け」の部分に集中し、積算は一旦横に置いて自分があげられる収益の見込みで買うという、ある意味不動産の常識から言えば小さくはないリスクを恐れず、他の人がとらない、とれない思い切りの良さをもって物件を手に入れています。
だからこそ、売る時にもやすやすと値下げをするつもりは元から無く、そもそも、そういう半端な気持ちでレジャーホテル物件は、買ったり売ったりしていないのでしょう。
一般の不動産の買い方売り方と異なる、そういう相場観が結局、新規参入の壁になっているように思われます。新規参入がしづらいということは、既得権が強いということでもあります。高い相場が維持されているのは、レジャーホテル物件の売り物が少ないということ、一般の不動産よりやり方によって収益が見込めるということの他、レジャーホテル物件についてはクローズされている市場であることからある種安定的である。成熟した市場がすでに形成されているような気がいたします。
新規参入のハードルが高いのは、価格(相場)が高いからとも言えそうです。価格が高いから二の足を踏む、こんなに高く買ったら儲からないだろうから買うのは止めよう、新規参入を検討する多くの方は、この段階でレジャーホテル物件を諦め、買うのであればやはり買い慣れた一般の物件を買うことにしよう、というお考えになるようです。
リスクを軽減するために価格を下げたいと思うのは当然ですが、自分が思うような価格まで欲しいと思う物件が値下がりすることは、まず、ありません。仮に、自分が買っていいと思うところまで簡単に値下がりしたとすれば、かえって心配するべき何かを見落としているのかもしれません。
たまたま本当に手頃な物件を運よく手に入れる方もいないとは言えませんが、運がよかったかどうかは、後からわかることであり、幸運だった人もいれば、買った後に苦労する方もいるでしょう。
幸運な方は、次にまたその幸運が自分にやってくると思いがちですが、運というのはあくまで運であるとすれば、そういう幸運は何度もは続かないものです。安く買うことは重要と言えば重要ですが、相場から見て安いかどうかの観点からのこだわりが強いと、かえって苦労をする場合もあるでしょう。
不動産において、物件を見る目が確かであれば、いい物件が買えるというのは、核心にあたる部分だとは思います。ただし、レジャーホテル物件のように実際が良ければ安く出回ることは基本的に無い種類の物件の場合は、一層お金の価値観が大事になってくるのではないかと思います。物件に価値があることは理解できても相場より高く買うのは誰しも避けたいものですが、相場では買えない物件をそれでも手に入れたいのであれば、物件の価値観から上乗せできるだけのお金の価値観を持てるかどうか。お金をはずまないとその物件は手に入らないという価値観(お金の価値観)に到達できるかどうかが、レジャーホテル物件を買うか買わないかの一つの分かれ道になっているようにも思われます。
不動産、中でもレジャーホテルのような営業物件は物件の価値がよくわかるから買えるとは限らず、物件の価値に留まらずお金の価値観をいかに強靭に鍛え上げることができるのか、あるいは素養として持っているのか。そうした面からの売買が行われる市場であると思います。
時に物件の価値を越えて、買えばさらなる儲けを生み出す可能性があるのがレジャーホテルだとすれば、お金の価値観とは、物件の価値観とは別の次元で、成功するかしないかを分けるものだと思います。
お金の価値観が抜きんでていて、成功するケースもありますが、どれほどお金の価値観に他の人にはないすごいところがあったとしても、物件の価値観で見誤ると失敗することもあります。それと同じように、物件の価値観がどれほど確かであっても、お金の価値観が相場の高値に付いていけなければ、レジャーホテルを買うことには結局ならない場合が多いように思います。もちろん、高値で買えるばかりがいいとは限らず、高値で買ったがための失敗というのも確かにあり、高すぎるものは買わない、価格が下がらない以上買わないという価値観も必要です。お金を稼ぐことは簡単ではないはずですから、お金の重みを軽視して高すぎる買い方をすれば、いずれ失敗するケースも想定されます。しかし、安く買おうと思っても買えない物件であれば、お金の価値観をしっかり持って、ある場面では長引かせず決着を付ける方が得だという、そういう価値観もあるわけです。
どちらがいいわるいではなく、レジャーホテルを買うということは、それだけ一般の物件を買うということとは違いがあるということなのだと思うのです。
それゆえに、レジャーホテルは、一般の物件とは異なる取引の様子があり、理屈ではない、感性(お金の価値観と言いかえてもいいでしょう)が影響する取引になるように感じます。
多くの人が買わない、また、買えない物件を買うということは、そういうことなのでしょう。
レジャーホテルの売買仲介は、物件の価値だけではなく、人の持つお金の価値観が見えてくる、そういう種類の仕事であるように思います。
レジャーホテルを買わない人のお金の価値観と、買う人、所有している人のお金の価値観は同一ではないような気がします。買えば儲かる(儲ける)可能性はあるけれど実現できるかどうか保証はないのがレジャーホテルだとすれば、物件の価値観を間違わないことはもちろん大切ですが、お金の価値観にも勇気がいるように思います。
儲けようという強い意思を持てる人でないと、やっていけない商売がレジャーホテル経営であるとすれば、すでにその素養があるかないかで、ある程度振り分けられているのだと思います。
レジャーホテルを買っている人から、アパート・マンションを買いたいと聞くことは少ないです。リスクがあっても、利回りが期待できるホテルの方がやりがい、おもしろみがあるのでしょうか。
一方、アパート・マンションやビルなどを買っている人から、レジャーホテルを買いたいとご相談を受けることは時々あります。利回りがいいと思われるからでしょう。しかし、実際に売りに出ている物件は、ご自分が期待するような利回りの高さはないため、ほとんどの場合、見送られます。そして、私自身も、基本的におすすめすることはないです。時に新規参入して成功する方もいることは承知しておりますが、アパート・マンション等とレジャーホテルは物件の種類が異なるため、一般的に越えられない壁の存在を感じているからかもしれません。
壁があるということは、内側と外側、内部と外部があるということです。多くの方は入ってこない壁の内側に入った方は、それだけに成功することがあります。しかし、内側に入れば必ず成功するとはなりません。
アパート・マンション投資も、どの立地を選別するかで結果も変わってきますが、そうしたことも含めて、マーケットに大体の答えがあります。レジャーホテルの場合は、答えを持つマーケットがおよそクローズしています。オープンな市場であれば、分析したり計算したりが成り立ちますが、そうでなければ答えは自分で出さなくはなりません。やったことがない人が答えを出すことは難しく、やっている人におしえてもらうか、「わからない」から止めておこうとなるものでしょう。やっている人におしえてもらっても、それで踏み出せる人もまた限られるでしょう。だから、ほとんどの人はやはり「わからないから、やめておこう」となるのではないでしょうか。
わからないのに「やってみよう」というのはリスクが高いです。わかっているからやってみるのが正解でしょう。したがって、新規参入の結果、成功する人ばかりとは限らないのです。
わかっている人がやるなら、成功する可能性は高まります。それでも、レジャーホテル投資も不動産投資である以上、成功もあれば失敗もあり得ます。初めの一歩のハードルが非常に高いのは、失敗を恐れる人にとっては、むしろ好条件ではないかという気もするのです。
ハードルというものは、越えられる人にしか越えられず、越えられない人には結果的に越えられなくて良かったという結果が、最初から約束されているものかもしれません。
そう思えば、自分がどのような不動産に投資をしようかという判断基準が明確になるのではないでしょうか。
コツコツ小さなものを積み立てるように分散投資がいいと思う人もいれば、大きな物件をまずは一つ買いたい人もおられることでしょう。ハードルが高いと跳ぶ気になれない人もいれば、高いハードルほど越えたくなる人もいるでしょうか。レジャーホテルは、その中でもとくにハードルが高い種類の物件だと思いますが、興味を持たれる方は少なくないようです。現実に購入する方は一部になりますが、やはり、購入するには、人が買わない、買えない物件にご自分の感性(お金の価値観)で大きなお金を投入できる信念が求められるのだと思います。
成功するかしないかは、その信念の強さによるところもあるように思います。そして、強い信念をもってしても、必ず勝つとは言えない厳しい市場がレジャーホテル(ラブホテル)の市場だと思います。
その市場の中において、売りに出る物件が安くならないのは、仮に高くても自分の判断でそれでも買うと決めて買える勇気を持った人でないと、現実にやっていけない世界があるからではないでしょうか。
物件はよくできていると思います。勇気がいる物件は、高利回りだけど独特の感性が求められ、勇気がそれほどなくても買える物件は、利回りは低くても心配が少ない。
自分はどちら側にいるのか、どちらが向いているのか。自分に向いている物件を買うのが賢明なのではないかと思います。レジャーホテルのように相場が高い物件は、無理をして買う物件になりがちです。簡単に買いやすく買える物件は無理をしないで買えるとしても、売る時も儲けがそう出るものでもないでしょう。
どのような物件にも一長一短あります。だから、不動産というものは人を引き付ける魅力があるのだと思います。
皆さんは、不動産について、どうお考えですか。
お好みの物件はありますか。どのような物件を好まれますか。
カズシン株式会社
代表取締役 山内和美