カズシン株式会社 代表取締役 山内和美のブログ
不動産業界20年を超えて、この経験に基づく…取引のこと、物件のこと、人間のこと。
宅地建物取引業者(不動産業者)カズシンの代表 山内和美が思うこと。
2021.01.16
リーマンショックで物件(不動産)価格が大幅に値下げされていた頃。
母が投資用の物件購入を少し考えた時があって、母が長年利用しているメインバンク(メガバンク)に一緒に行って、一回だけ相談してみたことがあります。
自己資金も十分求められましたが、低金利での借り入れができることがわかりました。
後日、銀行グループの不動産仲介会社から物件資料が届きました。ちょうど合致しそうな物件があったのでしょう。
ぱっと見た限り、良さそうな物件に思えました。リーマンショックだからこその価格と利回りでした。
価格は1億円くらい。23区内の駅近(駅のすぐ隣くらいの近さ)の一棟マンションでした。
場所柄はよく知っていましたし、入居率も良かったです。
母はすでに年齢が高く、借金をしてこれから物件を持つことにはためらいもあり、結局その物件は見送りました。
母が物件を買うことになれば、母の年齢から私が連帯保証することになりました。それでも買って損はない物件、この価格でこの物件が買えるのは今(リーマンショック)だからこそ、とちょっと思いました。私としては、物件としてはわるくないと思いましたが。(物件を買うのは価格だけではなく、買う人の年齢や考え方なども影響します。)
その物件も精査はしておりませんが、いい面ばかりではなくわるい面もあるわけです。どの物件でもあります。100点満点の物件が仮にあったとすれば、それはとても高いので、買う気にならないか、競合してもっと高くなり、価格が弱点になるわけです。それほど高くても買って良かったという世界も無きにしも非ずなのでしょうか。
取らぬ狸で終わった話です。その後物件価格が上昇し、当時のような価格で買えるあのような物件は見ませんでした。
リーマンショックの不動産市況を参考に、コロナショックが不動産を買うチャンスだと準備万端、これから起きるだろう市況の変化を待っている方もおられるでしょうか。
リーマンショックの時には、「サラリーマン大家さん」と言われる個人投資家の方の数はそれほどまだ多くなかったのではないでしょうか。
その後不動産融資が活発になり、企業にお勤めのサラリーマンの方が区分マンションのように小さな物件だけでなく、一棟収益物件(一棟アパート・一棟マンションなど)を億単位の融資を受けて買える(買う)ようになりました。
不動産の取引の裾野が広がったのです。
それまでも(リーマンショック以前も)個人投資家(サラリーマン大家さん)の方はおられたわけですが、不動産投資の敷居は高く、参入できる方も参入しようとする方も、主要な顧客層として集中する不動産会社も、貸出先として重視する金融機関も、それほど多くはなかったような気がします。
「アベノミクス」(2012年第2次安部内閣発足)による景気回復で不動産市況も活発になりました。
すでに不動産投資を始めていたサラリーマン大家さん(もしくは元「サラリーマン大家さん」)が書いた「不動産投資本」を読んだサラリーマンの方々が不動産投資にどんどん参入を始めました。金融機関も個人投資家(サラリーマン大家さん)向け融資に積極的になるところもあり、個人が不動産投資をする仕組みが出来上がりました。
一周先を走っていた先輩サラリーマン大家さん(個人投資家)の後を企業にお勤めの方々が追いかけました。
企業へお勤めをしている方等へ融資したもののその後サブリースが破綻したシェアハウスの問題などもあり、企業へお勤めの方、個人投資家の方が行う不動産投資への融資は縮小されてきた感じはありましたが、すでに参入への道が形として出来上がっているのですから不動産投資の市場は、これからも継続するものだと思います。
リーマンショックの時には、投げ売り状態になった物件を拾って買う(買える)方は、一部の方でした。一部の方しか買えないので、売る側も価格を下げざるを得ませんでした。
コロナショックの今、物件の投げ売りはまだ起きておらず、少なくとも大きくなってはいません。
しかし、コロナ禍返済猶予を受けていたケースがいつまでも待ってもらえるわけでもなく、時期がきても返済できないならばいよいよ売らざるを得なくなるでしょう。そうした市況において、リーマンショックの時のように、物件価格が下がるかと言えば、買い手の裾野の広がりが根本的に崩れない限り、下落幅はそれほど大きくならないと思います。
立地や物件や規模、価格帯によって、下落するものも現状とほとんど変わらないものもあるでしょう。物件によっては希少であれば上振れするものなど、バラつきは出ると思いますが、不動産投資が一般的になってきた今回は、投資をしたい方(買える方)が大勢いるうちは下落幅は底上げされるのではないかという気がしています。
裾野が広がってきているので、ほしい物件が大幅に下がるという状況は少ないかもしれません。自分がほしいと思う物件、買っていい(買いたい)と思う物件は他にも同じように考える人がいますので、競合します。思うほど下がらなくても買うか、買い叩いてみても下がらず結局見送るケースは案外あるのではないでしょうか。
イレギュラーな価格(値付けのミス?などと言われている物件も含まれるのでしょうか)での物件は、巡り合わせもありますが、入手できるには理由があると思います。
本来の物件価値より大幅に安く値付けされた物件が一般市場に出て、元々自分と何の縁もないのにやってくるということは、まず考えられません。
それは、不動産業者の買取の世界も同様です。買取業者の多くが営業マンを抱えています。物件を紹介してくれる仲介業者との関係作り、直接の買取で売ってくれる顧客探し等。会社は彼らの人件費の負担や広告宣伝費などのコストで余裕はなく、物件が買えれば買えたで、資金繰りしつつ物件を手にいれています。
買取業者の規模ややり方にもパターンは複数あるのですが、いい物件情報が手に入るには、それまでの投資や足を棒にしての営業活動、継続的な取引の実績、金融機関や仲介業者からの信用など、何らか理由があります。
コロナショックでいい物件情報を手に入れるためには、買取業者と競争するような場面が出てくるのでしょうか。
買取業者は売主の契約不適合責任免責で物件を買い、ローン特約なしで売買契約し期日までに決済します。
不動産業者が一旦買い取った物件が市場で再販されることになるわけですが、通常売主である不動産業者の利益がのっています。(リーマンショックのような時には損することもあります。)
この利益分、不動産業者から買わなければ価格が下がる、という考え方があるようです。
そうであれば、不動産業者が売主ではない、一般の方が売主である物件を仲介業者の紹介で買えば、仲介手数料はかかりますが、物件価格で業者の利益はのりません。(どちらの方面から買うのがいいかは一概に言い切れないところはありそうです。物件次第のところがあるので、前提を置かないと何とも言えないところです。)
私は不動産の仕事を始めて長いからなのか、性格的なところなのか、流通の仕組みといった観点からではなく原則その物件がどうなのか、物件としてどうなのかしか見ないので、不動産業者が買った物件の再販であれ、一般の方が売主の物件であれ、その点を自分自身がとくに気にするということはありません。
なぜなら、買取再販業者は時間とコストを投資しているので、市場価格より安く買って(買えて)いたとしても、それはそうだろうという話であり、業者さんが元いくらで買ったとか、三為だから高くて話にならないとか基本的に、そういうことでは思いません。
しかし、物件自体がどうということではないとしても、買取再販、とくに三為(第三者の為にする契約)には問題があるケースもあります。たとえば売主様や買主様の承諾を得ていない、不動産業者として守らなければならない信義則に触れるような、進め方に疑問を持たざるを得ない事例がないとは言い切れません。物件自体以前に、流通の過程において問題を感じる物件については、原則お客様にはすすめられません。不動産の取引において、仲介する立場にあれば、まず安全に、信用を裏切らないように努める必要があります。
話を戻しますと、物件がどうであるかが重要だと思います。そうは言っても、再販物や三為の物件は、業者の利益分高い、という考え方には十分に理はありますから、とくにそうした物件をおすすめするつもりもありません。
誰が持っているものだからという評価ではなく、この物件の価値がどうなのか、という見方をする習慣が付けば、業者さんが倒産しそうで投げ売りする物件などをひょいとつかんで、わるくない、というようなことも中にはあると思います。しかし、そういう物件であれば、不動産業者がまた買って、みたいな感じでぐるぐる回って、結局高くなっている、ということもあるでしょうか。
イレギュラーな値段になる時は、その物件にとって理由がある時でしょう。物件そのものを見る習慣が付いていれば、余計なこと(余計であると断言できないところもありますが。)に惑わされず、物件をつかむチャンスに出会えることもあるように思われます。「チャンスの神様は前髪しかない」と「慌てる乞食は貰いが少ない」が両立するのが不動産投資の特徴のような気がします。
皆さんはどのようにお考えになりますか。
今日はブログを3つも書きました。
新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言、今日は土曜日、どこにも出かけず一日家にいました。
カズシン株式会社
代表取締役 山内和美