カズシン株式会社 代表取締役 山内和美のブログ
不動産業界20年を超えて、この経験に基づく…取引のこと、物件のこと、人間のこと。
宅地建物取引業者(不動産業者)カズシンの代表 山内和美が思うこと。
2021.11.13
一昨日、東京ビッグサイトで『レジャー&サービス産業展2021』『レジャーホテルフェア2021』(展示会&セミナー)へ行ってきました。
私の目的は、主に『レジャーホテルフェア』の方です。レジャーホテル業界の設計士の先生や経営者の方々によるセミナーを聴講したり、出展しているホテル関連企業の方々と近況のお話をしたり、有意義な一日でした。(昨年の『レジャーホテルフェア』は、コロナ禍のため中止でした。)
レジャーホテルは装置産業です。改装も必要なため初期投資だけでなく、概して投資が重くなります。その分、しっかり売上をあげなくてはならず、コロナ禍においてレジャーホテルへの影響もあり、多くの経営者の方々は売上減少の厳しい試練の時にあります。減少の程度は、エリアやホテルによって様々ですが、どのように乗り切ろうかと真剣に考えておられます。
建築や改装にかける費用を抑えると、客単価をさげることになる傾向があります。いい物を作りお金をかけただけのことはあると思えるグレードの高い改装をすれば、地域一番店となり、高い集客力や客単価によって、結局のところ価値ある投資となる場合も多いです。「(費用を)かけるところはかける」方針が吉と出るのですが、そうは言っても、右肩上がりの時代は遠くなり、思い切った投資をする際には、回収がいつできるのか、投資の効果はどうなるのか、バランスが気になるものです。
狭い部屋を回転でまわすレジャーホテル(ラブホテル)もあれば、ゆっくり時を過ごしたくなるラグジュアリーなレジャーホテルもあります。広いお部屋、高い天井、露天風呂、最新設備、質の高い内装等々、いい物を作ろう、そして顧客満足を追求していけば、建築にかかる費用は高くなり、しっかり手を抜かないお金をかけた改装をするなら当然費用はその分かかります。安く仕上げるのか、本格的に手をかけるのか、費用対効果を考慮しながら、また経営されている方のお考えが反映されて、レジャーホテル事業は行われています。
東京オリンピックに向けて、ビジネスホテルや旅館、民泊など、宿泊関係の物がたくさん建ちました。宿泊施設の数が増えた分、レジャーホテルも含めてホテル等垣根を越えた競合が起こり得るようになっています。
ビジネスホテルやシティホテルのデイユース利用とレジャーホテルの休憩(デイユース)利用、どちらを選ぶかはお客様次第としても、レジャーホテルの領域がすでにレジャーホテル(ラブホテル)だけのものではなくなっている状況にあります。レジャーホテルの独自色をどう残し、何によって差別化し、集客力をどう維持していくのかが、課題となっています。
リスケして今を耐えているレジャーホテルは少なくないと思われますが、来年の春が来ればリスケが終わり返済が再開する見込みのようです。
そうなれば、耐えきれなかったホテルの売り物が出てくるだろうと言われています。耐えきれなかったばかりではなく、将来を考えての売り物も出てくるのではないかという気がします。
インバウンドがしばらく見込めない状況において、レジャーホテルに限らず垣根を越えて顧客のとり合いは続くように思われます。レジャーホテル物件の売り物が出れば、立地や価格に応じて、物件は誰かに買われていくと思いますが、過渡期にあって売る方も買う方も難しい判断に向き合わなくてはならないことになるのではないでしょうか。
土地(東京)はコロナ禍においても高値でよく動くように感じますが、レジャーホテルの売り物はなかなか動きません。今まで融資を受けて買えていたところでも、全体的に融資が受けづらくなっているようです。売り物が動きづらいのは、コロナウィルス感染症の影響を受けてレジャーホテルの売上がダウンしたことも理由の一つになりますが、今まで買ってきた方々もコロナ禍で余力がなくなっていることもありそうです。
レジャーホテル、ビジネスホテル、民泊等、宿泊関係の不動産に限らず、コロナウィルス感染症によって、オフィスビルもダメージがありました。事務所(弊社)がある東京の神田周辺のオフィスの空室率もあがっているようです。ニーズのある戸建用地、アパート・マンション用地は多少高くても、早期に成約となっている感じと比べると、収益物件(一棟アパート・マンション)はさらに選別されている気がします。
スルガ銀行の不正融資の問題があり、一棟収益物件などを購入していた層(サラリーマン投資家)の方々への融資が引き締まったことが理由の一つになっていると思います。また、売りに出ている物件のうちいい物件は限られており、合致しないとなった物件に関しては、市場において厳しい見方があるのではないかと思います。
不動産市況も変化していると感じます。何でもいいと言って物件を買う方はまずおられないでしょうから、需要のある物件は強いですが、需要が弱くなっている、あるいは融資が付きづらい物件は動きづらいのだろうと思います。(当たり前と言えば当たり前のことでしょうが。)リーマンショックの後、アベノミクス、インバウンド、東京オリンピックに向けてホテル建設ラッシュ、活況であった不動産市場がコロナショックで崩れたのだと思います。物件は安くなっていなくても、全般的に「いい物件とわるい物件(あるいは、ほどほどの物件)」の選別はコロナショックによって、明確になっているような気がします。
買いやすい価格帯である中古の区分マンションなどに投資が集まり、土地は欲しいところが多く、戸建や区分マンションなど住まい(実需)を求める人はコロナ禍でも買っています。
一棟物件(アパート・マンション)が買いづらくなった分選別の目が厳しくなり、商業ビル(飲食店等テナントが入っている)やホテル、オフィスビルなど大型物件の市況が変わったのだと思います。
商業ビル、オフィスビル等に関しては、立地の良い物件は、回復していくと思います。ホテルは選別は厳しいとしても、やはり立地の良い物は存在感はなくならないと思います。
一棟物件に関しても、立地や価格帯などに応じて成約するのでしょうが、不動産投資の人気エリアと失敗しそうなエリアに分かれて選別され、二極化ははっきりするのではないかと思います。
どの種類の物件を購入するのがいいのかはその人のお考えや状況、環境などによると思いますが、スルガ銀行の不正融資の問題(サラリーマンの方々の不動産投資の失敗)が社会問題化していることからも、サラリーマン投資家の方の投資の失敗から売りに出された物件は、価格によるとしても市場での評価は厳しいものになるでしょう。
この10年、三為(第三者のためにする契約)業者が一棟アパート等をまず自分が買って(売買契約)、サラリーマンの方々に利益をのせて売って儲けてきたようですが、買い手(サラリーマン投資家)が融資を受けづらくなった市況において、そのやり方には無理が出てくるでしょう。物件によっては、三為業者の物件を買うことが必ずしも損であるとは私は考えていませんが(いいとも思いません。ただ、物件や買い方によってはわるくない例もあると思います。)、物件の判断がつかない方に後で「おかしな物件を高値で買わされた」と思われるようなことはしない方がいいと思います。
三為業者で不動産業を継続できないところも出てくると思います。買ってくれるお客様がいなくなれば、成り立たないからです。物件を仕入れて三為業者に買ってもらっていた不動産業者(買取再販)も、三為業者が売る顧客がいなくなれば、やっていかれないところも出てきているでしょう。
実需向けに、区分マンションを買ってリフォームして売りに出している買取再販業者は仕入れできる物件にもよりますが、ニーズに応えていけるのであれば、継続していくのでしょう。
実需は引き続き一応のところ固いとすれば、投資物件をあつかう業者が分かれてくるのだと思います。ちなみに実需向けの物件は今も高いですが、高くなり過ぎた物件は、立地やどのような物件かにもよりますが落ち着いてくる面はあるように思います。
スルガショックによって不動産業者が淘汰され買い手(買える方)が選別され、物件の選別も厳しくなっていく傾向にあるのでしょう。並行して、コロナショックによって、物件の選別が起こっています。
この10年、サラリーマンの方々(一部)が流行するその波に乗り遅れまいと、不動産投資に熱中しました。金融機関の個人の不動産投資に対する融資、低金利の追い風を受けて、不動産投資に積極的であった時代でした。スルガショックやコロナショックで波は変わってきていますが、個人(サラリーマンの方々)へ開かれた不動産投資の市場が完全に閉じることはないでしょうし、将来の不安に対処したいと考える方々が不動産投資への意欲をなくすこともないでしょう。物件の種類や価格帯、立地や買う方の属性等によるのでしょうが、物件とその方のマッチング次第で、サラリーマン投資家の方々による不動産投資の市場は継続していくと思います。
スルガ銀行の不正融資の問題では、借り手責任云々ではなく、消費者保護の観点から救済や配慮がなされているようです。不動産についての情報や知識量の面で、不動産業者と不動産業以外のサラリーマンの方ではおおむね差があるでしょう。主にサラリーマン大家さん(個人の投資家)に対して物件を売却あるいは仲介してきた不動産業者さんは、岐路に立っていると思います。不動産投資というのは「投資」や不動産の事業、経営の部分があります。だから、消費者の意識では難しいと思いますが、一方、知識や経験がないことに付け込んで業者が騙すようにして売り付けていいはずありません。中には、サラリーマン投資家の方たちの頼りになる不動産のパートナーとして、いい物件を親身になって紹介したり、適切に売っていた業者さんもいると思います。一括りにはできませんが、世間の不動産業者全般に対する疑いの目を無視しないで、むしろきっかけとして、謙虚に、不動産業に真面目に精進していくほかないのでしょう。そうは言っても、不動産業者の一部の方は、今後も問題を起こすことがあるかもしれません。どのような不動産業者、どの業者さんと付き合うか、投資をしたい、物件を買いたい方がご自身でよく考えて、納得いくようにお選びいただくのがいいのでしょう。ご自身の価値観に近い業者さん、相性が良さそうな業者さん、大手志向の方なら大手の業者さん、親身に相談にのってもらいたいならそうしてくれそうな業者さん、実務が几帳面にできる業者さんをお探しならそのような業者さん、エリアに詳しいところが良ければそのエリアで営業したり縁がある業者さん、物件に詳しいところがよければその種類の物件を専門に扱っている業者さん、不動産業者は様々です。ご自身で「この不動産業者なら相談しても大丈夫」と思えるところに、相談されるのがいいでしょう。向こうから「いい話」で近づいてきた話に乗るのではなく、ご自分が選んでいく、物件も不動産業者も。そういう意識が成功するためには必要となる場合もあると思います。
お持ちの物件を三為業者に安く買い叩かれて、その三為業者(あるいは、次の業者、その次の業者)は高値で売却したというケースもあるようです。安く買って高く売れば、業者の利益は大きくなります。安く叩かれた場合もあれば、買う時は実際はそれほど安く叩いていなくても(誰が相手になるのか、どのような物件か、売出価格はどうなのか、などにもよりますが、物件にきつい指値を入れると買えない結果になりがちですから)売る時相場よりかなり高値で売って業者が儲けた場合もあるのでしょう。売却した物件のことを思い返すと不本意な思いが残る方もおられるのでしょう。
買う場合の相談だけではなく、売る場合の相談をどこにするかは大変重要でしょう。いいと思って相談してみたけどここは自分と合わないと思えば、断りを入れてそれ以上進めないでいい場合もあるかもしれません。
ご自分の財産のこと、不動産の売却は、この人ならと基本的に任せていいとご自分が思える、できることならそのような不動産業者にすることです。
皆さんは、いかがお考えになりますか。
カズシン株式会社
代表取締役 山内和美