カズシン株式会社 代表取締役 山内和美のブログ
不動産業界20年を超えて、この経験に基づく…取引のこと、物件のこと、人間のこと。
宅地建物取引業者(不動産業者)カズシンの代表 山内和美が思うこと。
2021.10.02
不動産の売買仲介は、一人でもできる種類の仕事です。一人でやっている、あるいはわずかな人数で業務をこなしている業者さんは、たくさんいます。私もそうです。
固定のお客様がいれば、また信頼できるネットワークがあれば、広告や営業なしでも仕事はきますし、仕事になります。
当然、一人や少人数の限界というものはあり、手を広げすぎたり、何でもかんでもやるというようなことだと、時間と労力がかかる割に、やり切れず成果には結びつかないものです。自分の専門や得意な領域に集中することが必要です。ただし、状況により絞り込みすぎてそれだけにかかっていると、結果的にその1件が成約しない場合、「次、どうしよう・・・」と、冷や汗が出る思いがする、そうしたタイプの仕事です。
同業者の中には、大きな物件の仲介に数年間集中し、その結果成立せず、廃業する人もいます。数年無収入となり、次の案件の見込みもなく、免許を返納する例もあります。
廃業せず続いている人の中にも、たとえば5年間で1件というような長い間隔で成約し、それで業と生活を維持している方もいる。さすがにそこまでになると稀にはなりますが、程度の差はあれ、そうした世界です。
それくらいなら小さめの物件を数やった方が精神的にも楽ではないかと思いはしても、人によって、得意不得意、ネットワークにも違いがあり、小さい物件の話がこない人もいます。逆に大きい物件が得意ではなく、話がこない人もいます。情報を右から左に流すだけのイメージが強い不動産仲介業ですが、その種の物件やエリアなどに精通しているか、お客様からよほど信頼されていないと、成約まで辿り着くのは思いのほか難しいものです。
私はすでに若い年齢は過ぎたので、若い不動産業者さんたちとは感覚が異なり、今の時代を反映しているわけではないです。それでも、私の付き合いのある業者さんたちを見ていても、成約するには成約するだけの理由があり、腕があり、知識があり、実績とやる気があるものだと感じます。表面だけでさらっと仕事をこなしているようにみえても、幾度もの苦い経験もあるからこそ、業として成り立たせることができるのだと思います。
さて、不動産の買取再販も、一人や少人数でやれる仕事です。たくさん数をこなそうとしたり、範囲を広げれば、そういうわけにはいかないでしょうが、自分のやれる範囲でやるという姿勢であれば、じっくり取り組みながらで、業として成り立ちます。
私は仲介が中心ですが、周囲の業者さんの話によれば、競売でたとえば共有持分のある物件に入札。そうした物件は競争が少ないので、それほど高値で入れなくても、入札人数も少ないため落札となり。落札後、持分を買い取り、立ち退きをかけて。市場に売りに出す、という、少し手の込んだ、そしてリスクのあるやり方をとっている人もいます。
競争が激しく高値でしか落札できなくなった競売物件ですが、共有持分や、あるいは借地物件など、一般の方も買取再販業者であっても、わざわざ手を出さない物件に入札し、時間と手間をかけて、仕上げていく人もいます。また、そういう手のかかる物件でなくては、納得いく値段では落札できず、したがって儲けも見込めない、というわけです。手をかけて商品にしていくため、時間はかかりますが、一つ一つ問題を取り除いていければ、市場に出した時には利益は残るものです。
当然とれるリスクも考慮しており、問題が取り除けない場合についても考えて、入札をしているわけです。それでも、およそのところは、まずは時間をかければ、仮に譲歩もしつつ、問題は解決できる傾向があるでしょう。
しかし、リーマンショックのような急激な市場の変化がきた時にこそ、リスクは強風となりがちで、とれるはずのリスクがさすがに今回はとれないリスクに、という事態に陥ります。リスクというのは、そういうものだと思います。織り込み済みのリスクがそれでは済まなくなる。しかし、最初からリーマンショックのようなリスクを想定していては、そもそも何もできない。アンバランスをわかったうえで、バランスをとっていく感覚が求められるところでしょうが、こうしたところのことは、やはり、不動産業者の中でも得意と不得意、好むと好まないに分かれるところと言えそうです。
私はと言えば、自分で買って売って、となると、リスクを大きくとってまで積極的にやろうと思わない方でしょう。仲介で共有持分の買取のお話をまとめることなどはありますが。
買取再販するのであれば、手離れの良いものを手掛けようと思う方です。しかし、そのようなものは、手に入らず、たとえ手に入ったとしても利益はあまり期待できません。だからと言って、買取するために、手のかかる物件へ移行しようとは思いません。
利益が期待できないのであれば、わざわざ買取再販しないで、買い取るなら保有しておけばいいと思う方です。もちろん、無理なく保有ができれば、の話ですが。そして、利益を得る必要があるならば、仲介案件に取り組みをする方が性に合っています。たとえば3%という限られた報酬仲介手数料の範囲であっても、買って売って残る利益よりも、仲介で積み重なるノウハウの方が私にとっては価値があるような気がするからでしょう。慣れた仲介の方が確かな感じを持つからもあると思います。
買取再販の方を好む業者さんは、この感覚が反対です。仲介は売主様や買主様の考えに振り回されて、自分で決定できるものではなく、買取再販は自分で決定ができるから、仲介ではなく買取再販をやるのだという方の話を聞きます。買取価格を決めて、売出価格を決めるのは自分であり値下げをするのもいくら下げるかを決めるのは自分、こういう感覚をお持ちのようです。
不動産業者と言っても、一括りにはできず、考え方も感覚も、感じ方も異なります。それぞれが、自分の持前を生かして、自分の腕と勘を頼りに、しのぎを削っているのが不動産業の世界です。
イメージは良いとは言えない業界ですが、やはりそこには努力できる知恵ある者のみが最終的には生き残れる、独特ではありますが厳しい世界が形成されているように思われます。
大手と零細、売買と賃貸、買取と仲介、ファンド等々、さらに言えば建売業者、ディベロッパー(デベロッパー)、地上げの会社等々。それぞれ違いがあります。法人と取引する、個人が顧客である、などでも、違いがあります。違いがあるから、自然に大体棲み分けもできており、その中で、とくに零細業者(当社も含めて)は、人と人のつながりを大切に、一つの仕事を大事に、お客様の信頼をなくさないよう日々取り組みを続けています。
不動産業者が起こした問題がニュースに流れる時があります。不動産の世界は、大きなお金が動き、人によっては誘惑も多く、信義則(信義誠実の原則)に反する事件が起こります。
正直であることは、不動産業を続けていくうえで、なくてはならない資質であるような気がいたします。口八丁手八丁よりも、正直であればこそ乗り越えられる壁というものが不動産の仕事にはあるのだと思います。
カズシン株式会社
代表取締役 山内和美