カズシン・ブログ

カズシン株式会社 代表取締役 山内和美のブログ
不動産業界20年を超えて、この経験に基づく…取引のこと、物件のこと、人間のこと。
宅地建物取引業者(不動産業者)カズシンの代表 山内和美が思うこと。

スマートデイズ 簡易宿泊所も。シェアハウスだけではなかった

2018.08.19

スマートデイズ(旧スマートライフ)の物件へのスルガ銀行の融資は、シェアハウス「かぼちゃの馬車」が対象となっていただけではなく、アパートや簡易宿泊所も対象となり融資が実行されていたそうです。(以前よりネットの記事などで取り上げられていたことであり、直近で判明したということではないですが。)

簡易宿所(簡易宿泊所)というのは、シェアハウスとは異なり、旅館業法上の宿泊施設となります。

旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」となります。

スマートデイズ(旧スマートライフ)の簡易宿泊所は、旅館業の中の「簡易宿所」営業となります。

簡易宿所は、「山小屋」から元々始まっているという話をきいたことがあります。したがって、できるだけたくさんの方を入れられるように、大部屋や一室にベッドをたくさん並べたり、といった間取を中心(たとえばですが、半分くらいは相部屋としなければならないとか)としています。

そして、共用トイレの数、男女別も定められています。ある程度の面積(収容人数)がないと、トイレの数ばかり増えてしまって、採算上成り立ちづらいプランとなりがちです。

「一人当たり一泊(一日)何千円」で稼働させていくわけですが、一般的にその料金は低額設定であり、人件費(フロント常駐の場合フロントさん、ベッドメイクのルームさん)やリネン代(シーツ洗濯代)、水道代(トイレ、シャワー)等の経費を差し引くと、思ったほど手残りがないという物件も出てくると思います。

スマートデイズ(旧スマートライフ)は、シェアハウス「かぼちゃの馬車」やアパートを投資家向けに企画、運営していく他、簡易宿泊所(簡易宿所)も投資家向けに企画し、販売等おこなっていたようです。

簡易宿泊所の数は、シェアハウス「かぼちゃの馬車」の1000棟(オーナー様700人とか800人)とか言われている数から比べると少なく、数十棟(約60人のオーナー様)だったようです。

一棟当たりの購入金額が1億円超と、シェアハウス「かぼちゃの馬車」とほぼ同じくらいの価格帯が多かったようです。

シェアハウスと簡易宿泊所が同じ価格帯ということに、今更ながらですがちょっとしたショックを受けてしまいます。

簡易宿泊所は日銭で大勢宿泊させて、毎日営業します。いわゆる日銭の営業物件となります。

毎日日銭が入ってくる商売なのに、マンスリー契約や年契約をベースとしたシェアハウスと物件の価格帯が同じくらいだったということ。

簡易宿泊所は日銭の営業物件ですから、立地もより厳選されます。通常は発展した駅の近くの立地でないと集客も苦労することでしょう。

シェアハウスももちろん駅の近くが望ましいですが、旅行者を相手とする簡易宿泊所はより一層利便性の高い立地で勝負をしないと、たいへん厳しい戦いとなると思われます。

利便性の高い立地は、土地の価格が高いです。シェアハウスと同じ販売価格で仕上げるためには、建物の価格を小さくしなくてはなりません。建物の延床面積がそれほど大きくならないため(スマートデイズのシェアハウスは部屋が個室、トイレ・シャワー・台所は共用)、建築費がそれほどかからないとはいえ、およそ1億円(超)くらいが購入価格となるならば、建物の規模はかなり小さいものとなるのではないでしょうか。

建物の大きさ(価格)が小さいものとなるならば、収容できる人員も相応に限られてきますので、経費を差し引くと(一般的に小規模なほど経費率が高くなります)、結果的にいくら手残りがあるのか。スマートデイズ(旧スマートライフ)の運営費も経費となり、スルガ銀行からの借入金利も経費となります。

それらを差し引いた後、スルガ銀行からの融資(ほぼフルローン?)の返済の原資が残るのか。

スマートデイズ(旧スマートライフ)がシェアハウス「かぼちゃの馬車」と同じように、一括借上げ(サブリース)保証をしての契約(販売)であったとしても、スマートデイズが倒産したのですから、スキームは破綻しており、現実問題、採算はとれるのか、返済は可能なのか。

海外からの旅行客(バックパッカー)を中心に、集客できそうなエリアの駅近の土地と、その土地に見合う大きさの建物込みで、販売価格1億円(超)というのは、日銭商売で利益をあげていくには、厳しい戦いになるのではないかという気がします。

シェアハウスと比べると、より一層商売の要素が多くなる(経費もかかる。日銭で回していく才覚がいる)ことなどを考えると、中長期的にしっかり採算が成り立つ物件の価格帯として1億円(東京で旅行客が多い立地)くらいというのは、購入する側からの予算として見れば手頃であっても、経営的には手を出すにはかえってハードルが高い(投資額が小さい)ということになるのではないでしょうか。

シェアハウスと同様に、サラリーマン投資家の方々が融資を受けられる上限として、1億円(土地建物合計)という目安を設定して、それに見合うプラン有りき、であったような気さえしてきます。

実際には、スマートデイズ(旧スマートライフ)の簡易宿泊所を利用したこともないので、どのようなものなのか知りません。したがって、私の思い込みにすぎないのかもしれませんが。

率直に、1億円というのは大変なお金ですが、多額の投資をして始める宿泊業として見ると、心もとない投資額ではないかと思われます。

競争も予想以上に厳しく、宿泊料金の低価格競争に入ってしまうと、始める意味があったのだろうかという結果になる可能性もないことはないでしょう。

ただ、シェアハウスと同様にやはり立地が良ければ、軌道に乗せていくことはできるのではないかと思います。

運営力で、稼働率をあげて、宿泊料金の設定もうまい値付けをして乗り切っていけるかもしれないです。

簡易宿泊所ですから毎日動きます。サラリーマンの投資家の方々が自分で運営するのは難しいことでしょう。良心的でノウハウのある運営・管理会社と良い出会いをされることが明暗を分けるということになりそうです。

うまく軌道にのれば、日銭の商売はおもしろいところがたくさんあるので、いずれ、ご自身でやってみたいと思うくらいやりがいが出てくるかもしれないです。

わるいことばかりではないと思います。

人間は失敗するからこそ、気づけることがあります。

失敗しないことではなく(失敗しない人間はいないと思います)、気づけることが人にとってとても大切なのだと思います。

そして気づいた人は強いです。強い人は、優しい人でもあります。

 

カズシン株式会社

代表取締役 山内和美