カズシン・ブログ

カズシン株式会社 代表取締役 山内和美のブログ
不動産業界20年を超えて、この経験に基づく…取引のこと、物件のこと、人間のこと。
宅地建物取引業者(不動産業者)カズシンの代表 山内和美が思うこと。

シェアハウス運営・販売 2社目の破産(スマートデイズ「旧スマートライフ」に続いて) 「ゴールデンゲイン」

2018.05.25

『シェアハウス運営の「ゴールデンゲイン」が東京地裁から今月(5月)22日に破産開始手続きの決定を受けたことが23日、わかった』そうです。

シェアハウスを運営する事業者が破産するのは、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」運営のスマートデイズに続き2社目になる。』(日本経済新聞)

スマートデイズ(旧スマートライフ)と同様に、資金の大半はスルガ銀行からの融資であったそうです。

私は、「ゴールデンゲイン」については詳しくありませんが、スマートデイズ(旧スマートライフ)と同じようにシェアハウスを建築、販売、運営している(厳密に言えば、建築は請負業者、販売は販売代理店であったとしても。企画から入り、販売後の運営受託をしている)会社がいくつかあることは知っていました。

この「ゴールデンゲイン」も、オーナー様へ借上保証した賃料と比べて、実際に入居者から得られる賃料が少ないため、オーナー様への支払いができなくなったそうです。

スマートデイズ(旧スマートライフ)の場合も、もともとは高目の賃料設定によりオーナー様の手元に残る金額(月々返済した後まだ手元に残る額)がそれなりにあるように見せかけていましたが、実際入居者から支払いを受けられる額は少なく、破綻に至りました。

実際入居者から支払いを受けられる額が少なかったというのは、そもそもお部屋が埋まらなかったということのほか、当初の賃料設定が相場と乖離していたため埋めるためには当初設定していた賃料より下げて入居付けをしなくてはならなかったこと、この2つが要因となっています。

仮に、当初家賃5万円+共益費2万円の合計7万円で設定していたお部屋が、実際には家賃3万円+共益費1万円の合計4万円でなくては入居付けができない、という事態となれば、金融機関(スルガ銀行)への返済後手元に残る額は無く、持ち出しということにさえなってしまいます。

机上の空論で数字を打ち変えながら帳尻を合わせた賃料は、現実的な数字ではなかったがために、入居付けの際苦労する。入居者を入れる、部屋を埋めるためには、賃料を現実的な数字にせざるを得ない。

しかし、その現実的な数字でも、簡単に入居者は集まらない立地もあると思われます。

一方、たとえ立地が良くて満室にできたとしても、現実的な賃料で埋めていくのでは、返済するので精一杯で、手残りは期待できない、というところではないかと思われます。

買ったけど、何のために買ったのか?

という話になります。

いろいろいいことを言うことは簡単で、いい事を言う人はたくさんいますが、現実的なところをしっかり見据えていかなくては、大変な事態となります。

いい話は信じたくなりますが、そのような話(時)こそ、ご用心です。

ところで、スルガ銀行は、不動産業者の間ではよく知られた銀行です。

個人投資家(サラリーマン大家さん、サラリーマン投資家など)という言葉に馴染みが出てきたのは、このスルガ銀行が融資を拡大してきた展開と結び付いている感じがあります。

それくらい、スルガ銀行は、サラリーマンの方が投資物件を購入する際に利用をされてきた銀行です。

『金持ち父さん 貧乏父さん』が一世を風靡して、投資に目覚めた会社員の方々が不動産投資へ向かう。その追い風の一つとなったのが「スルガ銀行」等によるサラリーマン投資家への前向きな融資です。

「スルガ銀行(等)が出してくれるから」ということで、多くの不動産業者さんがサラリーマン投資家の方々へ投資物件をすすめてきているようです。

ここで、説明しておくと、全員の方が失敗するわけではないでしょう。たしかに成功しているサラリーマン大家さん、サラリーマン投資家の方々もたくさんいらっしゃることでしょう。しかし、成功してもいずれ失敗となったり、成功しているように見えて内実はそうでもなかったり、ということもあります。だから、私は「おおむね失敗する」と考えて、その考えをベースに仕事をしてきております。

しかし、「不動産投資がわるい」わけではないと思います。スルガ銀行等が融資をしてくれたおかげで、資産を形成し、通常であれば会社員が得られる収入をはるかに超えた収入を不動産から得られている方もいらっしゃることでしょう。

スルガ銀行は民間の金融機関ですから「お金を貸すのが商売」であり、借りたい方が「貸してください」とくれば、貸せるなら貸すということについて、不思議はありません。場合によっては、銀行から「借りてください」と出向くことだってありえるでしょう。

スルガ銀行が「お金を貸した」ことについては、商売で貸したのですから特別と言えるほどの違和感はなく、おかしいとも思われません。

ただ、今回は、スマートデイズ等とあまりに結び付きが強くなってしまっており、不動産投資のリスクを引き受ける覚悟までは無いだろうと思われる方々へ積極的に貸し出したがために、その後のその方たちの人生を大きく変えることになってしまったこと。属性が良かったので貸したくなるが、その人たちの人生を考えれば、踏みとどまって貸さないようにするのが、良心というものだったのかもしれません。

商売をするうえでの、一種の誠実さの問題が問われているのだと思います。

「融資が付くから」という理由だけで、不動産を持ってしまうということは、苦労を背負い込むのがわかっているのにわざわざ苦労を買いに行くようなものです。

本来、不動産は自己資金をできれば半分、少なくとも3分の1程度入れて買うのが望ましいと言われています。

それなのに個人投資家に対して、フルローンに近い融資を実行すれば、おおよそ、遅かれ早かれ、返済に苦労をすることとなります。市場が良ければ売り抜けることもできるでしょうが、物事はそのようにうまくいくことは「まず、ない」ものとして思っております。

損切してでも肩の荷を下ろせれば、まだ良い方で、スマートデイズ(旧スマートライフ)の「かぼちゃの馬車」や、今回の「ゴールデンゲイン」のような難しい物件(新築シェアハウス)を借上保証(サブリース)付で購入してしまうと、その約束が果たされず、結果的に首が回らなくなるということになりそうです。

 

物が動きお金が動く、ということは、誰かが得する(利益を得る)ということです。サラリーマン投資家が得をしていない(利益を得ていない)とすれば、それ以外の一連に関わった方々が得をした(利益を得た)ということになるのでしょうか。

中には、ひょっとして、仮に1つだけ「かぼちゃの馬車」を売って利益を得たけど、訴えられた、という販売会社(不動産会社)さんもあるかもしれません。

得た利益、訴えられて失う社会的信用等を秤にかければ、おそらく1棟だけなら売らない方が良かったでしょう。2棟、3棟でも、いいえ、あるいは何棟売ったとしても、売らない方が良かったという会社さんはあるでしょう。社会的信用を大切にしている会社であれば、得た利益より、結果的に、このようなことに関わってしまったことの不利益の方が大きいという感じがすることでしょう(後から感じることであるにせよ。また、今回のように騒動になったから思うことであるにせよ)。

しかし、最初から「社会的信用」等を重視していない人や会社であれば、ひたすら売って利益を得ることの方が意義あることだったのではないかと思います。

そのような人や会社が、売ることで得た利益は、単純に「利益」以外にないという認識があったのではないかと思います(社会的信用と秤にかけないので)。ここのところへきて、責任追及が少しずつ、形として表れ、少なくとも「逃げ道」を積極的に周囲が用意をするというような助け船は、もう現れないだろうと思われます。

「投資家の自己責任」論から、今度は、今回のスキームを考えた方々、今回のスキームに関わり利益を得た方々が責任追及されることに対しての「自業自得」論へと、論点が変わっていくのではないかと思われます。

「投資は自己責任」ですが、原則、人を泣かせる投資を人にすすめないことも守りたいところです。

中には泣かせるつもりがなくても、「どうしても買いたい」という気持ち(欲求)を持って来られることもあるでしょう。

その時は、事後に恨まれないように、リスクの説明をしっかりしておくことが求められると思います。「それでも、やる(投資する)」と言われれば、投資はリスクリターンですから、リターンが得られる可能性に賭ける方の自由な意思でしょう。

たった一つのことだけ、私は今後も心に刻んでまいりたいと思います。

「信義則」

不動産業者である限りは、信義則(信義誠実の原則)を忘れないで業務を遂行してまいりたいと想います。

 

カズシン株式会社

代表取締役 山内和美