カズシン株式会社 代表取締役 山内和美のブログ
不動産業界20年を超えて、この経験に基づく…取引のこと、物件のこと、人間のこと。
宅地建物取引業者(不動産業者)カズシンの代表 山内和美が思うこと。
2018.04.09
このブログを始めた時から、「スマートデイズ」(『かぼちゃの馬車』他)について、書いてきました。
なぜ書いたのか。「スマートデイズ(旧スマートライフ)」のことがずっと気になっていました。『かぼちゃの馬車』他 スマートデイズ(旧スマートライフ)の物件について、数年前から、気になっていました。
なぜ気になっていたのか。プロでも難しい物件を会社員の方々たち、あまり物件(不動産投資)に詳しくないと思われる方々に次々に売っていたからです。
おおむねプロは、リスクをとっても、ビジネスになる(利益が出る)物件であれば手を出します。そのプロが手を出さないということは、利益があまり見込めない物件であるということです。そういう物件であれば、リスクが小さくないと割りに合いません。
今回の物件(「スマートデイズ」)は、利益が見込めない物件であるうえに、リスクが大きかったと言えるでしょう。
その「スマートデイズ」が本日(4月9日)、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請して受理されたそうです。
「スマートデイズ」の負債は、約60億円余りとか。
「スマートデイズ」の物件を購入されたオーナー様は、気が気でないのではないでしょうか。中でも集団訴訟したオーナー様方は、気持ちがかき乱されるような思いさえ持たれているのではないかとお察しいたします。
なぜ、このようなことが起きたのか。
現実から乖離した「ビジネスモデル」と思われましたが、なぜ、約700人もの社会人として安定した収入を得られている方々が、この話に乗ってしまったのでしょうか。
「スマートデイズ(旧スマートライフ)」本社は、銀座にあり、りっぱなビルに入っていました。
不動産会社(シェアハウスの運営管理)「スマートデイズ(旧スマートライフ)」のオフィスには、シェアハウス(かぼちゃの馬車)の模型といったものが展示されていたとか。
多額のお金をかけたオフィスであったと聞きます。
きれいなオフィスで、いいイメージが喚起される模型なども見ることができ、安心して大丈夫だと思われる言葉(フレーズ)でビジネスモデルの説明をされると、ふらふらっと、心が動いてしまうといったことが起こったのかもしれないと、想像します。
人は見かけで、何かを安心するところがあると思います。
企業が高い家賃を支払ってでも、銀座や、イメージの良い立地に、オフィスを構えるのは、交通の便だけが理由ではないと思います。
このような立地の良い場所でオフィスを構えられるのは、その会社が利益が出ているから。「だから高い家賃が支払える」という、信用力に関わってくるのだと思われます。
そのようなオフィスに行くと、自己にとって都合のいいように解釈してしまう面は否めないと思います。その企業がほんとうに、実態に見合う会社であればいいですが、イメージ戦略的に、オフィスがりっぱというような側面が仮にあったとすると、このあたりは慎重になるべきところだと思います。
「スマートデイズ(旧スマートライフ)」は、たしかに、売上が驚くべきスピードで伸びていた企業ですので、賃料が高いところにオフィスを構えられるということ自体は、見合うところだったのかもしれません。
しかし、イメージ戦略として、そのオフィスが十二分に機能したとすれば、会社員の方々が物件を購入する際の安心感につながった面はあるのではないかと思います。
安定した収入を得ている会社員の方々がお勤めされている企業の多くも、きっと、ブランド力のある立地であったり、高い賃料が想像されるりっぱなビルなどに入っているのではないでしょうか。
きれいなオフィスに慣れている方々は、やはりきれいなオフィスを見ると、慣習的に安心するという心の動きがあるように感じられます。
あまりに古くて小さいビルの中の一室がオフィスである企業(会社)と比べると、自動的に、きれいなオフィスの方をより信頼するという確信のようなものをお持ちであるということもなくはないのではないかと思います。
そして、そのことは必ずしも間違いということはないと思います。企業(会社)にとって、イメージというのは大切なものの1つです。オフィスがどこにあり、どのようなビルなのかも、その重要なところと言えるでしょう。
しかし、見るべきところは、外面(見かけ)ばかりではなく、内面(実態)も忘れてはならないことを思い出していただきたいです。
上滑りしないで、真実(現実)を見抜く目が何より「不動産投資」においては求められるものではないでしょうか。
とくに今回のシェアハウス販売のように、前提が常識的でなく、ビジネスモデルについては魅力的である一方で論理的でないと感じられる物件につきましては、よほど、リスクを考えて、そのうえで「でも、買う」という覚悟でいかないと、後悔しやすく、成功させることは難しいのではないかと思います。
シェアハウスは物件的に難しいと思われるものです。
プロでも成功させることは難しい物件は、プロでない方であれば尚のこと困難でしょう。プロに相談するのはいいと思いますが(もちろん相談する相手は選ぶ必要があるでしょう)、プロ任せというのは、危険が過ぎたと思われます。
オーナー様方にとってはたいへん酷になりますが、プロ任せに、任せてしまったことについて、たとえその任せた相手を間違えたと思われたとしても、その相手へ任せてしまったことへの自己責任、この部分から完全に離れることは、道のりが厳しいようにも思われます。
とはいえ、「見抜くこと」ほど、難しいことはないと思います。誰しも難しいと思います。
また、今回は、「スマートデイズ(スマートライフ)」がすでに作りあげた「ビジネスモデル」をパッケージにして話が出来上がっていたようにも感じられます。したがって、「投資は自己責任」論だけで、オーナー様の責任を問うことは、心情としては、気の毒にも感じられます。
オーナー様の現状、未来を思うとき、たいへん心が痛みます。ただ、絶望することのないようにどうか気を強く持っていただきたいと思います。
人は誰もが欲を持ち、いい話には心が動き、人を信用してしまうところがあると思います。
自分が得する(自分の欲を満足させる)いい話はないということ。教訓で言えば、このようなところに尽きるのかもしれません。いい話には裏があります。
人生というものは「平坦ではない」と思います。
平坦ではない困難な出来事さえ、時間が解決してくれるということも、人生にはたくさんあると思います。それまでに流す涙や悔しさなどは計り知れないところだと思いますが、「今回の経験があったからこそ」と言える今後を作っていくこともできるのではないかと思います。
不動産投資で大きな失敗(損失)をすると、その後は、動いたお金が大きかっただけに大変であることは否定のしようがありません。しかし、無くしたものが「お金」であるとしたら、それは、どれほど上に見たとしても「命の次に大事なお金」、つまり一番大事なものではないのです。一番大事なものは「命」でしょう。
今回の「スマートデイズ(旧スマートライフ)」の動きは、不動産業界にいて、私としては気になって仕方ないものでした。不動産業者から見て難しい物件は、一般の方が持つには荷が重すぎると思います。
「不動産投資」は怖いところがあります。
リスクをよく考えてからの投資をおすすめいたします。
カズシン株式会社
代表取締役 山内和美